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飯豊山での現地調査

飯豊連峰について

飯豊連峰の概要              

 
 飯豊連峰は,磐梯朝日国立公園の中ほどにあり,福島・山形・新潟の3県にまたがる雄大な山地です。飯豊山神社のある飯豊本山は標高2105メートル。そして,日本百名山にも選ばれている飯豊山を主峰に,標高2,128 mで飯豊連峰最高峰の大日岳,東斜面に幾筋もの雪量豊富な雪渓を持つ北股岳2025m,烏帽子(えぼし)岳,広い尾根の先にお花畑を抱える御西(おにし)岳など2000メートル級の山々が連なります。飯豊山は信仰の山で,明治期に神社の所領権をめぐり,米沢藩と会津藩,新潟県と福島県で争いがあったといい,現在は三国岳から御西岳まで,細長く福島県境線が延びています。飯豊連峰は稜線からの眺望も素晴らしく,万年雪も残ることから「東北アルプス」とも呼ばれています。山容が豊かにメシを盛った形から「飯豊」と名づけられたとも伝えられています。 

一般財団法人 自然公園財団出版「日本の国立公園」より
より大きく見やすい地図はこちら★


  

飯豊連峰の自然

 ほとんどが花崗岩からなり,山頂には一部平らな面もありますが,中腹以下は深い谷に刻まれています。冬は北西の季節風が直接吹き付けるため一帯は数メートルの雪に覆われます。主に東側に雪が積もる偏東積雪の現象により東側の地形が大きく浸食され,非対称山稜となっています。その残雪は夏でも雪渓として残ります。また,豊富な雪解け水は稲作や生活用水の貴重な水源として喜多方地方を潤しています。

   

現地調査

現地調査の概要

 平成24年8月21日から23日,飯豊地域にて「アザミウマ」という昆虫の分布調査を行いました。本プロジェクトは裏磐梯地域がメイン・フィールドで,飯豊地域で調査を行うメンバーはほとんどいません。そこで,飯豊地域の調査で見られた生物を紹介させて頂きます。調査ルートは次のとおりです。川入(喜多方市山都町)の御沢登山口から下十五里,中十五里,上十五里,笹平,横峰を経て三国岳と地蔵山との分岐点に出ました。ここからが特別保護地区です。ここから約100mの標高ごとにアザミウマ類の採集を行いました。剣ヶ峰を経て三国岳小屋がある三国岳に至ります。続いて七ツ森,種蒔山を経て切合小屋に到着です(21日は切合小屋泊)。翌日は切合小屋から草履塚,姥権現,御秘所,一ノ王子を経て飯豊山神社へ。そして標高2105mの飯豊本山到着です。山頂付近でしばらく採集した後,来た道を三国岳まで戻りました(22日は三国岳小屋泊)。そして翌日は川入の登山口まで一気に下りました。
 今回の調査で調査対象としたアザミウマは生の植物組織(花の中,葉の裏,茎の表面など)に付く種類で,体長も1-2mm程度と大変小さいため,採集はビーティング・ネット(叩き網)を用いました。下の写真で調査者(研究室の学生で志賀澄歌)が手に持っている白い四角形をしたものがビーティング・ネットです。植物の下にネットを入れ,その上でその植物を木の棒で軽く叩き,植物に付いていた虫などをネットの上に落下させます。落下したものの中からアザミウマを肉眼で探し出し,見つけたら保存液(エタノール,酢酸,グリセリンの混合溶液)を先端に少しだけ浸した筆ですくい取って保存液の入った小型のガラスビンの中に入れます。アザミウマが採れた場合は,その植物の写真を撮り,GPSを使って標高と位置座標のデータを記録しました。採集したアザミウマは研究室に持ち帰ってからプレパラート標本にして顕微鏡を使って名前を調べます。

   

現地調査で出会った植物

 主に東側に雪が積もる偏東積雪の現象は植生にも影響を与えています。西側の新潟県側にはヒナウスユキソウなどの乾地性高山植物が,東側の山形県側にはイワイチョウなどの湿地性高山植物が分布しています。飯豊連峰は雪田とともに高山植物のお花畑でも知られる山域です。飯豊山は亜高山帯であるため針葉樹林がほとんどないことが特徴で,日本でも有数なブナの原生林が広がります。登山道沿いに見られた花々をいくつか紹介します。

 イイデリンドウ
 ウサギギク
 ウメバチソウ
 ヨツバシオガマ
 コキンレイカ
 タカネマツムシソウ
 チングルマ
 ハクサンコザクラ
 ハクサンフウロ
 ヒメシャジン
 モミジカラマツ
 ゼンテイカ(ニッコウキスゲ)
 マルバコゴメグサ
 ミヤマリンドウ
 

現地調査で出会った昆虫

 飯豊連峰の山麓は自然が豊かで開発などの人為的な影響が少なく,広大なブナ林がよく保存されています。そのため低山から山地帯の生物相が豊富で,高山帯のお花畑に生息するような昆虫が多くみられます。ブナ林を代表する昆虫としては,シラキトビナナフシやフジミドリシジミなどが見られました。また,飯豊連峰の代表的な植生である雪田植生と結びついた昆虫も多くみられます。三国岳の手前,剣ヶ峰付近から飯豊本山に至るまでの間,翅が著しく短くなったハヤチネフキバッタをよく見かけました。本山山頂付近にはミヤマヒナバッタが多かったです。また,ベニヒカゲは福島県では飯豊山が唯一の産地で,今回も三国岳の手前,剣ヶ峰付近からその姿を見せてくれました。その他,キベリタテハやクジャクチョウなども登山道やお花畑でその美しい翅を広げて目を楽しませてくれました。なお,甲虫の仲間には「飯豊」の名を冠した種・亜種がいくつか知られています(イイデヌレチゴミムシ,イイデクロナガゴミムシ,イイデツヤゴモクムシ,イイデヒサゴコメツキ,イイデドウガネナガハネカクシなど)。今回は甲虫をチェックしていないので,それらは見つけられませんでした。甲虫の仲間としてはミヤマハンミョウが非常に多かったです。

キベリタテハ表(写真は会津駒ヶ岳産
キベリタテハ裏
 フジミドリシジミ
シラキトビナナフシ
 ハヤチネフキバッタ
オオハサミシリアゲ
 ミヤマハンミョウ
 クジャクチョウ
 ベニヒカゲ(写真は長野県根子岳産


磐梯朝日遷移プロジェクト





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