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出羽三山での現地調査

出羽三山について

出羽三山の概要

 出羽三山(でわさんざん)は,磐梯朝日国立公園の最北部を占める山形県庄内地方に広がる月山・羽黒山・湯殿山の総称です.山形県の中央で出羽丘陵の南部に位置する海抜1,984mの月山を主峰に,峰続きの北の端で山形県鶴岡市には標高414mの羽黒山,月山の西方で山形県鶴岡市と西村山郡西川町の境には標高1,500mの湯殿山が位置しています.日本海を渡る湿った雪によって育まれる雪田植物は見事で,多量の雪は氷河を形作り,岩を削って独特な山岳景観を作りだしています.出羽三山にはそれぞれの山頂に神社があり,修研道を中心とした山岳信仰の場として,現在も多くの修験者,参拝者を集めています.













一般財団法人 自然公園財団出版「日本の国立公園」より

  

月山の自然

 月山は世界でも珍しい半円形のアスピーデ型火山と以前は言われていましたが,現在は月山の溶岩はアスピーテの定義にある塩基性のものではなく,弥陀ヶ原(みだがはら)集塊岩を基底として,その上に同じ火口から幾度も輝石安山岩の溶岩を流したため,疑似アスピーテとなったものと考えられています.また月山には噴火口を示す明らかな地形がなく,現在の頂上をもって火口部と推定するしかありません.火山活動の末期になって火口が狭くなり,噴出溶岩によって火口がふさがれたものと推定されています.
 山腹の標高1,300メートルまではブナの純林がみられ,その上部はチシマザサ,ハイマツの高山帯に移行する日本海側の豪雪山地特有の植生を示しています.海抜1,400m附近には弥陀ヶ原などがあります.弥陀ヶ原は高冷地のため枯草が腐る事なく何万年にもわたって積み重なり出来た泥炭層の湿原で,6~7月頃は,一面のお花畑が現われ,高山植物が多くみられます.北西側斜面には長径2.5kmの馬蹄型カルデラが開いて急峻な姿を見せ,北方には山体崩壊時の堆積物が分布しています.月山では,高層湿原や高山植物,亜高山帯針葉樹林等の高山に見られる特殊な植物が多く見られるほか,スイレン科のオゼコウホネ,キク科のウサギギク等,オコジョ,イワヒバリ等の珍しい動物も確認されており,天然記念物と同時に国立公園の天然保護区域に指定されています.

  

現地調査

現地調査の概要

 

 平成25年9月23日,出羽三山地域の月山にてアザミウマの分布調査を行いました.飯豊地域の紹介でも記しましたが,本プロジェクトは裏磐梯地域がメイン・フィールドで,磐梯朝日国立公園のそれ以外の地域で調査を行うメンバーはほとんどいません.そこで,出羽三山地域の月山調査で見られた生物を紹介させて頂きます.月山山頂への登山ルートはいくつか知られていますが,今回の調査は「羽黒コース」と呼ばれるルート沿いで行いました.月山八合目まで車で行き,高層湿原が広がる弥陀ヶ原から仏生池小屋,オモワシ山の肩を経て山頂(1984m)までの往復です.このルートは全体が特別保護地区で,かつ国の天然記念物でもあります.今回の調査では,ビーティング・ネット(叩き網)を用いた採集のほか,ユリ科植物の葉に付く種類の分布確認のため,マイヅルソウやバイケイソウなどの葉をめくりながらの登山となりました.
 平成26年9月24日も同様の調査を実施しました.

  

現地調査で出会った植物

 エゾオヤマリンドウ
キオン 
 シロバナトウウチソウ
 ナナカマド
ナンブタカネアザミ
ハクサンイチゲ
 ハクサンフウロ
ミヤマアキノキリンソウ
ミヤマキンバイ
 ミヤマリンドウ
 モミジカラマツ
 アオノツガザクラ
 ウサギギク
ウメバチソウ
シラネニンジン


現地調査で出会った昆虫

 弥陀ヶ原から山頂までのルートはほとんどが湿原と草原の中を歩くコースで森林はありません.このルート沿いは高山植物が豊富に見られるため,高山帯のお花畑に生息するような昆虫が多く見られそうですが,今回はすでに紅葉が始まり,花の時期はほとんど終わってしまっていたので,チョウの仲間はまったく見られず,オオマルハナバチなどマルハナバチの仲間がアザミ類の花を訪れるのを見かけただけでした.弥陀ヶ原の池塘群や仏生池,山頂小屋裏の池塘など水場が多く見られるのもこのルートの特徴ですが,弥陀ヶ原の池塘内にはアミメトビケラ属の一種の幼虫が,仏生池内にはマメゲンゴロウ,ミズスマシが見られました.ルリボシヤンマの仲間の産卵も確認しました.昆虫ではありませんが,池塘や池にはイモリ(成体)やクロサンショウウオ(幼生)も見られました.バッタの仲間にもほとんど出会えませんでしたが,山頂付近ではミヤマヒナバッタが見られました.山頂手前で会ったハイカーからはベニヒカゲがまだ飛んでいた,との情報を頂きました(ベニヒカゲは福島県内では飯豊山でしか見られません).

 オオマルハナバチ
 アミメトビケラ属
 ミヤマヒナバッタ
 ハヤチネフキバッタ♀
 ハヤチネフキバッタ♂
 

磐梯朝日遷移プロジェクト





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