研究テーマ「幻の植物イワキアブラガヤのDNA分析」
イワキアブラガヤ(Scripus hattosianus)は福島県耶麻
群磐梯町大寺発電所付近で1925年に採集された標本に基づき、牧野富太郎によって1933年に発表された植物です。1939年に戸ノ口で採集された標本を最後に現在まで確認されておらず、現在は絶滅したと考えられており、十数枚の押し葉標本だけが現存しています(その内1枚が福島大学生物標本室に保管されています)。また、イワキアブラガヤによく似た植物が北米に広く分布していることはわかっていますが、標本から両者の形態を区別することは困難で,その実態は明らかになっていません。現在は北米からの帰化植物であるという説と、北米とは隔離して分布していた絶滅種であるという説があり、決着を見ていません。
私たちは残された押し葉標本の一部からDNAを抽出し、”幻の植物”であるイワキアブラガヤの分類を再検討することを目的に研究を行っています。
研究テーマ「葉を失ったイチヤクソウ」
腐生植物とは、根に共生する菌根菌から有機物を吸収し、有機栄養を得る能力を持った植物のことです。イチヤクソウ属植物もその多くが腐生植物でああると考えられていますが、他の植物と同じように緑色の葉をもち、光合成も行います。イチヤクソウ(Pyrola
japonica)は、県内に広く分布しており、福島大学キャンパス内をはじめとした様々な場所で見られます。一方、これとよく似ていながら、葉がほとんど退化したものをヒトツバイチヤクソウ(P,japonica
F,subaphylla)と呼び、現在はイチヤクソウの品種として区別されています。中には葉を持たない個体も多くみられ、このようなこのような個体は、他のイチヤクソウ属植物と比較して腐生的な性質が強く、光合成はほとんど行わないと考えられます。まさに劇的な変化と言えるでしょう。しかし、この不思議な植物についての研究はほとんどなく、実体は未だ明らかになっていません。
これまでの調査で、ヒトツバイチヤクソウは基本的に植物体が赤いこと、葉のサイズに変異が大きいこと、福島県内では磐梯朝日国立公園内などの数ヶ所で生育地が確認されているに過ぎず、稀な植物であることがわかってきました。今後はDNA解析、生活史、生育環境のどの調査から、ヒトツバイチヤクソウの正体と、分類や生態を明らかにしたいと考えています。
共生システム理工学研究科 1年 首藤光太郎
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