プロジェクトリーダーご挨拶|Greeting

持続循環可能な社会の実現のためには、大学の知財と地域産業界の課題意識とを共有した問題解決体制が不可欠である。現在東北地方では、年々増大する大都市圏からの廃棄物に対処する処理施設の狭隘化や迅速かつ効果的な処理方策の確立が逼迫した課題となって来ている。特に、福島県では、大都市圏からの中間処理目的の廃棄物、汚泥、がれき類、廃プラスチック、動植物性残さの増大に加えて、地域に特有な廃棄物、汚泥、動物の糞尿、バイオマス・コジェネレーション活用廃棄物、廃プラスチック類(農業用を含む)の効率的かつ高速処理技術の開発が強く求められており、再資源化技術および効率の高い減量策や回収策や啓発活動を含めた総括的な解決策の開発が緊急な課題となっている。

しかし、このような課題に対して再資源化・再利用するなどの科学技術的対応だけでは年々増大する廃棄物の処理問題を抜本的に解決することはできず、新たな視点に立っての対応が強く求められている。この課題は「物の循環」と言う学問的な視点から捉えると、大学が「知の構造化」を地域社会に対して展開できる複雑系の問題である。地方大学の役割を考えるとき、現在抱えている廃棄物処理問題への短期的解決策の提案等ばかりでなく、長期的視点からの抜本的な問題解決策の創出に向けた取り組みを展開することが必要である。地域大学が地域と協働連携し、それぞれが現有する知識の構造化を図り、持続循環型社会の在り方を基盤とした将来性のある解決型体系として構築することが必要である。

プロジェク卜研究「大都市圏廃棄物の持続循環型産業システム体系の構築―廃棄物管理システムの戦略的研究―」(平成20年度から平成22年度)は、廃棄物を研究対象に3R (Reduce,Reuse,Recycle) の技術的対応と、2R (Repair, Refuse)の啓発教育とを連携融合した戦略的な研究を大学と地域社会(自治体・企業・市民)が協働連携し取組むことで、技術やシステムを研究開発し、それらを発信するとともに、複雑系の課題を解決する方策としての新しい課題解決型の学問体系を構築することを目指すものである。

福島大学の共生システム理工学類の構成教員は、生産製造、物流サービス、経済・経営、都市計画に関わる研究者であり、これに地域の素材製造技術者と廃棄物回収業者、素材流通・サービス関係者、経済・経営関係者、行政関係者が協働連携すれば、総合的な持続循環型産業システムを構築できる最適状態となる。このような研究環境の中で、上記の対応戦略で研究に取組むことで、技術開発並びに持続循環型産業システムのコンセプトを確立し、地域及び世界にも通用する体系としても発信できるものと考えている。他地域でも適応する普遍性のある廃棄物管理システムや産業システムを構築することは、学問的にも社会・地域貢献の面からも意義がある。

福島大学では、持続循環型社会の形成を推進するため、すでに、平成17年度より「自然共生・再生研究」を福島県・国土交通省・流域関連自治体との連携で実施しており、本研究もこの一環の研究活動の中にある科学技術と人文社会科学に立脚した超学際的な異分野の関係者による取り組みである。本フロジェクト研究のさらなる発展のために、関係者各位のご協力、ご支援をお願いいたします。

平成21年3月31日
研究代表者 入戸野修