top

  災害時の避難生活における音環境の問題
top

Koji Nagahata


intro

はじめに

 東北地方太平洋沖地震とそれに引き続く津波,さらには,福島における原子力発電所の事故で被災された多くの方々が避難所生活を送られています.私たちの研究グループが新潟県中越地震の際に行った避難生活に関する研究の成果が,今回の被災者の方々に少しでも役に立てばと考え,ここで公開することにしました.避難所を運営されている方々や仮設住宅の設置を計画している方々にこの情報が伝わり,被災者の皆様が少しでも良い環境で生活できることにつながれば,本当にうれしく思います.


避難所の生活環境について

概要
 新潟県中越地震の際の(旧)山古志村の被災者を対象に行った質問紙調査の結果のうち,避難所生活における生活環境の問題(生活空間の広さ,避難所の温度,明るさ,音,におい,風呂,トイレ,その他の設備,プライバシーの確保)に対する愁訴についての設問と,ストレスに関する設問について検討した.愁訴者数という観点では,生活空間の広さ,施設の設備に関する問題という,施設自体に関する問題点が,他の問題と比較して大きな問題であった.しかしながら,避難所生活でのストレスとの関係という観点からは,それらの問題より,音の問題,プライバシーの確保の問題の方が,より大きな問題であった.
 避難所の形態に着目すると,大型の体育館と,セミナーハウス等の小型の施設とでは,避難所の温度の問題,音の問題,においの問題,トイレの問題,プライバシーの確保の問題において,大型体育館の方が問題に対する愁訴率が有意に高かった.
 山古志のケースでは,大型体育館の音環境を,セミナーハウス等のそれと同程度まで改善することができたら,避難所生活に対するストレスに対する愁訴者を,1割程度減少させることができたと推定される.


避難所設置者の皆様へ
 避難所を設置する際には,出来る限り体育館ではなく,公民館や教室のように,一部屋あたりの床面積が狭い施設を提供してください.私自身,体育館に設置された避難所で何泊かしましたが,体育館は音が響きすぎるし,床の振動が伝わりやすく,寝転がっている際に足音が耳につきます.
 どうしても体育館を避難所として使わざるを得ない場合は,福島大学避難所で実施した次の対策が,音環境の改善に一定の効果がありましたので,お試しください.
 ・床にマット,断熱材等を敷き,その上一面に毛布を敷き詰める.
    → 吸音効果があり,体育館特有の残響感が一定程度改善しました.
 ・テレビを複数台,分散して配置する.
    → テレビ1台あたりの視聴者数を減らすことで,個々のテレビの音量を下げることができます.
避難者の生活スペースの一例
各区画に敷いたマットの一例
断熱材を敷いている様子


詳細情報
 避難所における生活環境の問題とストレスとの関係について (pdf)
 → 複数の査読論文や学会発表で発表した内容を1つにまとめたものです.


仮設住宅の音環境について

概要
 新潟県中越地震の際の(旧)山古志村の被災者と阪神大震災,及び,雲仙火山災害の被災者の仮設住宅における音の問題についての愁訴率を比較したところ,山古志村の被災者の愁訴率が有意に低かった.雲仙火山災害の際には,アパートやマンションなどの居住経験の少なさが仮設住宅における音の問題の愁訴率を高くすると考えられていたが,アパートやマンションなどの居住経験が最も少ないと考えられる山古志の被災者が,最も音に対する愁訴率が低かった.山古志の被災者に対しては,村での集落の機能が仮設住宅でも活用できるよう部屋割りがなされた.この配慮が,音に対する愁訴率を下げた要因の1つであると考えられる.

仮設住宅の部屋割りの計画を立てる皆様へ
 震災前のコミュニティを出来る限り生かせる形で部屋割りを決定してください.そのことにより,コミュニティを活用できるばかりでなく,騒音問題を減らすことができ,住民のストレス軽減につながると考えられます.


詳細情報
 避難所における生活環境の問題とストレスとの関係について (pdf)
 → 日本音響学会で発表した講演論文です.(日本音響学会講演論文集, pp.1037-1040, (2008.9). )


問い合わせ先

永幡 幸司
E-mail:nagahata@sss.fukushima-u.ac.jp



Top Pageへ戻る