国立大学法人 福島大学
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自然共生再生プロジェクト Research Project on Coexisting with Nature and Regenerating Nature
目的
福島県は猪苗代湖をはじめとする湖沼群や,阿武隈川,阿賀野川水系など大きな河川があり,水資源の豊かな環境を有している。しかし,阿武隈川流域は,東北地方の大河川流域の中で最も人口密度が高く,都市廃水,農業排水,温泉排水等のために水質汚染も進んでいる。また,地域的には水不足や水害ポテンシャルの面で課題を抱え,過去100年で99回の洪水が発生している。一方,気候変化により過去100年で10%から30%もの降水量が減少しており,水資源の量的,質的保全が重要になっている。

水資源の量的・質的保全のためには,水循環系の健全化が不可欠で,健全化には自然・生態系環境の保全に果たす水の機能を充足しながら,水循環系における種々のバランスと持続可能性が保たれた状態に再生することが重要である。

本研究プロジェクトは流域における気圏,地圏および水圏を通して循環する一連の水の流れと,それに伴う物質の流れとに注目して,様々な人間活動が水循環系と自然・生態系に及ぼす影響に関する因果関係を明らかにするとともに,新たな水循環系改善技術ツールの研究開発と適用性の吟味を行い,自然科学的アプローチと人文科学的アプローチとを統合することによって,人間の営みと自然環境の保全とが調和し持続性がある,人間社会と水循環系との関係−水循環系マネジメント・システム−を再構築することを目的とする。
研究概要
  水環境問題を対象として様々な専門分野の研究者がそれぞれの課題設定のもとに取り組み,それらを総合してその地域の水循環系の保全・再生に資することにする。また,総合化のために一部フィールドを共有しながら異分野の交流と融合を図り,効果的,効率的に研究を推進する。研究テーマを,次の3つに大別する。
 
1) 水循環系に係わる諸問題の現象,因果関係の理解に関する研究,特に,モニタリングとモデリングによる実態把握と将来予測のための自然的ならびに人為的水循環系の解明,水循環にともなう物質循環系(水質形成過程)の解明,および物質循環系と水域生態系との関係の解明など
2) 既存技術や施策の有効性の検証と新技術の開発研究,特に,農業・畜産廃水に対するバイオ・エコエンジニアリングによる循環型技術の開発研究,土壌・地下水浄化技術など
3) 流域の水を中心とした環境マネジメントに関する研究,特に,流域水質管理手法,地下水の適正利用と管理,流域治水,地域/流域連携,住民参加/環境教育など
 
福島県をはじめ,国土交通省,支流を含めた流域関連自治体と連携しつつ研究を推進する。
 
ダミー
各自の研究テーマ
I.水循環系に係わる諸問題の把握と将来予測
II.既存技術,施策の有効性の検証と新技術の開発研究
III.流域の水,環境マネジメントの総合化に関する研究
I.水循環系に係わる諸問題の把握と将来予測
■ I−1.水循環系の解明
 
テーマ 氏 名
・ 阿武隈流域の降水システムと降水の量と質の変動に関する研究 渡辺 明  
・ 阿武隈川流域の水循環系の定量化 木内 豪  
・ 阿武隈川流域の地下水流動についての基礎研究 柴崎 直明
・ 河川流域の地形分析/地形発達史研究 後藤 秀昭 (人間発達文化学類, 研究協力者) 
■ I−2.水循環にともなう物質循環の解明
 
テーマ 氏 名
・ 阿武隈川支流域における汚濁負荷発生構造 後藤 忍
・ 阿武隈川流域における水循環・物質循環 木内 豪
・ 阿武隈川流域における物質循環のモニタリングとモデリング 長林 久夫(日大・工学部,研究協力者)
・ 河川水における有機汚染物質の調査 高安 徹 猪俣 慎二 長谷部 亨
・ 河川の懸濁・着色物質及び河床付着物に関する研究 難波 謙二
・ 阿武隈川流域水質の変異原性物質の超微量計測システムの開発 高貝 慶隆
・ 砕屑物の鉱物組成と化学組成による運搬・堆積量の推定 長橋 良隆
■ I−3.物質循環系と水域生態系との関係の解明
 
テーマ 氏 名
・ 福島県内100年間の水域生態系変遷の推定のための植物資料の収集と
  データベース化
黒沢 高秀
・ 摺上川ダムが水域生態系に与える影響の解明
  〜底生動物のモニタリングによる摺上川流域環境の実態把握
塘 忠顕
・ 阿武隈川支流域の河川林・渓畔林の実態調査 木村 勝彦
II.既存技術,施策の有効性の検証と新技術の開発研究
 
テーマ 氏 名
・ 廃棄繊維素材を応用した水中含有有機化合物の除去 金沢 等
・ 油脂含有廃水による水質汚染を防止するための微生物処理技術の開発 杉森 大助
・ 畜産廃棄物資源化施設の解析 佐藤 理夫
・ バイオ・エコエンジニアリングによる水浄化技術の開発 稲森 悠平 (客員教授)
III.流域の水,環境マネジメントの総合化に関する研究
 
テーマ 氏 名
・ 流域自治体の共同体意識形成ならびに住民活動のアクティビティとの相
  関に関する研究
後藤 忍
・ 研究対象地域の地域誌:水環境と地域社会・産業・文化との関係、まちづ
  くり、住民組織と流域環境との関係の検討
初沢 敏生 (人間発達文化学類)
・ 都市・地域計画からみた水循環上の課題と流域連携のあり方 鈴木 浩
・ 流域の自然・社会特性と流域水マネジメント 虫明 功臣
・ 流域情報GISデータベースの構築 後藤 秀昭 木内 豪 後藤 忍 渡辺 明
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