案内 of 塘研究室

研究内容の紹介

<生物のことはまだあまり知らない人向けの内容紹介>
 塘研究室では,卵の中で昆虫の体が徐々に出来ていく過程や昆虫のもつ様々な形態を主に顕微鏡を用いて観察し,発生の謎や形態のもつ機能を明らかにしたり,野外で様々な環境に適応して生活している昆虫を採集し,その生態を調べたり,どこにどんな種類が棲息しているかを明らかにしています。このどちらの研究テーマにおいても,その目的は,昆虫という小さな生物を通して,生き物の生き様を感じ,自然を見る目を養うことです。また,昆虫の観察を通して,自分の自然観や世界観を拡げることを最大の目標としています。「虫」というとちょっと苦手な人もたくさんいると思いますが,ほんのちょっと勇気を出してじっくり見ていると,それまで気づかなかった愛らしい面も見えてきます。現在この地球上で最も繁栄している生物である昆虫の世界を覗いて見ませんか?興味のある方は,気軽に研究室までどうぞ。

<生物のことをまあまあ知っている人向けの内容紹介>
 塘研究室は「生物研環境解析研究室」の看板を掲げています。しかし,この看板には多少「偽りあり」で,実際には研究材料を専ら「昆虫」に絞っています。具体的な研究内容は,次の3つが主です。1)比較形態学的な手法を用いた昆虫の配偶子形成,特に卵巣構造と卵形成様式の多様性と進化に関する研究。昆虫の中でも,栄養細胞の分化しない卵形成,栄養細胞の特殊な分裂が生じる卵形成,特殊な卵黄形成・卵膜形成を行う昆虫類などを研究材料として,その卵形成様式や卵巣構造を光学顕微鏡と電子顕微鏡を用いて観察・記載しています。2)アザミウマ類(昆虫綱:総翅目)の腹板腺の微細構造に関する研究。こちらは別のページで詳しく紹介していますので,そちらを参照して下さい。3)地域の昆虫類の分布,分類,生態などに関する研究。主に福島県内の様々な場所でその地域に生息している特定の分類群のファウナ(昆虫相)を明らかにしたり,その分類群の生活史を調査したりしています。塘研究室のフィールドやこれまでに明らかになったその場所の昆虫相については,ホームページで情報発信していますので,ご覧下さい。

ゼミなどの内容

研究室のゼミは毎週月曜5時限目です

 塘研究室は共生システム理工学類棟(理工棟)6階の605室が教員研究室,604室が学生のメイン・ラボ,618室がサブ・サボ(研究機器が設置されている部屋)になっています。通常,研究室のメンバーは604室か618室で研究を行っていますが,ゼミは理工310演習室(理工棟3F)で行われています。ゼミは研究室配属が決まった3年生,そして4年生,院生と教員が参加します。ちなみに,教育実習などで参加学生が少なくなっても,教員一人だけにならない限りゼミは開かれます。教育学部時代は学生と先生がマン・ツー・マンでゼミ,なんてことも珍しくありませんでした(が今では考えられません・・・)。
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ゼミの内容は<論文紹介>と<ミニ・レクチャー>です。学外での研究発表会や卒業研究発表会の後のゼミは反省会となることもあります。

<論文紹介>
 ニューサイエンス社が発行している日本語のほぼ月刊雑誌「昆虫と自然」の特集論文(5〜7編ほどあります)を論文を読んで,その内容を簡潔にまとめ,ゼミのメンバーに分かりやすく紹介します。「昆虫と自然」の各号の特集は,1つのトピックスに対して様々な視点や材料からアプローチしている論文から構成されている場合が多いので,自分が卒業研究を進めていく上で,そういった多面的な視点を理解する機会になります。日本語の論文の読解能力を身につけることも目的の一つです。

<ミニ・レクチャー>
 ミニ・レクチャーは,外書講読の一つで,現在は「Insect Conservation, A Handbook of Approaches and Methods」を読んでいます。各自が割り当てられた部分について,(英語を訳し,)内容を理解し,必要な場合は参考文献や図書を調べ,その内容をゼミのメンバーに分かりやすくPPTなどのプレセンテーション・ファイルを用いてレクチャーする機会です(現在は3人一組で行っています)。
 英語で書かれた専門書を読むことは学類の学生にとっては大変なことですが,研究を進めるためには「自分の研究分野において,現在,何がどこまで明らかになっているか」を知ることは重要です。そのためには,英語で書かれた論文を読む必要が必ず生じます。英語の論文を読めるようになるためにも,普段から英文を読む習慣を身につけてもらいたいと思い,このような機会を設けています。

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研究報告会は毎週月曜4時限目です

 4年生・院生は週に1回,3年生も年明け(1月か2月)から週に1回,卒業研究(修論研究)の進捗状況を報告する機会があります。これは一週間の間にどれだけ研究が進んだか,その間にどんなことが明らかになったか,どんな問題に突き当たったか,次にどのような研究方針を取るのか,などを報告してもらい,ゼミのメンバーと討論を行ったりもします。この様に研究の進行状況を定期的にチェックすることは,自分にとっては研究のまとめの機会になり,また,研究室のメンバーにとっては,他のメンバーの研究にアドバイスやサジェスチョンを与える機会になります。ちなみに,この報告会のために各自が作成したレジュメは,研究発表を行ったり,卒業論文を書くときの重要な研究資料の役割も果たします。

卒業論文作成スケジュール

 塘研究室では,卒業論文の作成スケジュールが以下のように決まっています。

1.11月末か12月初めに長野県菅平高原で開催される「前口動物学セミナー」,あるいは12月中旬に福島県大玉村のフォレストパークあだたらで開催される「生き物調査発表会」で研究発表を行う。
2.卒論のドラフト版(素々稿と読んでいます)を院生か3年生にチェックしてもらい,修正する。
3.御用納め(12月27日か28日)の日までに指導教員に卒論の素稿を提出する。
4.指導教員から1月7日前後に校閲された素稿が返却されるのを皮切りに,1月中は指導教員による少なくとも4回以上のしつこい校閲を受け,31日(年度によって2月になったりもする)までに卒論を完成させる。

という訳で,4年生が卒業研究に関するデータを取ることができるのは原則11月までです(発表会で頂いた指摘に応えるために12月までデータを取る場合もありますが)。卒論の教務課への提出以降,いっさい卒論の内容を修正することはありません。

卒業研究の中間発表会が10月に開催されます

2008年度,2009年度,塘研究室は木村研,黒沢研,難波研と合同で,生物系グループとして発表会を開催してきました。4年生一人一人が4研究室のメンバー(新たに研究室配属になった3年生も含む)の前でプレゼンテーションを行います。研究目的をしっかりと認識しているか,それに相応しいアプローチ方法で研究を進められているか,などが厳しくチェックされます。卒業研究としては,まず,これが第一関門でしょう。

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【オープン・キャンパス】
毎年,塘研究室では,オープン・キャンパスの時に研究実験棟7Fの生態学実験室を利用して,生物系の展示を行っています。この時に,4年生・院生はそれぞれの卒業研究・修論研究の内容を,高校生や一般の人にも分かるようにポスターにまとめたものを展示しています。
 なお,SEMと実体顕微鏡を用いたチョウの翅の鱗粉観察,フォレストパークあだたらに棲息するチョウ類とトンボ類の展翅標本展示,福島市周辺の河川に分布する生きた水生昆虫の展示などを毎年行っており,キャンパス・ツアーにも組み込んでもらっています。

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【学内外での教育支援】
研究室のメンバーは外内外での様々な教育活動にお手伝いとして参加します。学内であれば,保全生物学実験,自然環境調査法,環境解析演習などの授業補助がありますし,学外でもSSH(スーパーサイエンスハイスクール)での高校生への指導補助,せせらぎスクール指導者養成講座での現職教員や地域の環境活動リーダーたちへの指導補助,あだたら生物クラブ(フォレストパークあだたらで開催)での参加者(児童・生徒・学生と一般の方)などへの指導補助などがあります。

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学生が発表している画像が見つからなかったので・・・発表者は教員です。

菅平前口動物学セミナー

塘研究室では,4年生に学外での研究発表を義務づけています。塘研究室の4年生は,毎年11月末か12月初めに長野県の菅平高原にある筑波大学菅平高原実験センターで開催される「菅平前口動物学セミナー 」で,卒業研究の成果を発表しています。このセミナーは全国から無脊椎動物(中でも昆虫が圧倒的に多い)に関する研究を行っている研究者,学生,学校の先生,一般の人などが集まって研究成果を発表し,活発に討論をする場です。発表される研究内容も大学の研究室における研究成果だけではなく,海外での研究調査の様子,高校の生物部の研究成果,生物教育に関するアンケート調査結果など様々です。このセミナーで4年生が発表する目的は,研究成果を学外の様々な分野の(厳しい)研究者に聴いて頂き,ここで得たいろいろな意見・批判を卒業論文をまとめる上での参考にすること,そして何よりも以下で紹介します環境システムマネジメント専攻の「卒業研究発表会」に向けての「度胸作り」です。

前口動物とは,発生初期に形成された原口がそのまま成体の口になる動物の総称で,節足動物,環形動物,軟体動物をはじめとするほとんどの無脊椎動物が含まれます。ただし,単系統群でないことはほぼ確実です。

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フォレストパークあだたら生き物調査発表会

卒業研究ではフィールドワークを主としてきた学生は,毎年12月中旬にふくしま県民の森「フォレストパークあだたら」で開催される「生き物調査発表会」で,卒業研究の発表を行っています。この発表会には学外の研究者こそ参加していませんが,県内各地でエコリーダーや森の案内人として活躍されている方が参加され,学生たちの発表にアドバイスやサジェスチョンを下さいます。2007年と2008年は塘研究室と黒沢研だけの参加でしたが,2009年からは難波研も参加するようになりました。

この発表会は2007年にふくしま県民の森「フォレストパークあだたら」をフィールドにして研究を実施した学生や研究者がその成果を広く県民に向けて発表することを目的に始まりました。今では福島県内あちこちのフィールドを舞台に学生や研究者が研究し,得られた成果を発表する機会に位置づけられています。

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卒業研究発表会

研究室で1年半にわたってなされた研究成果を,4年次の年度末(2月中旬)に開催される「環境システムマネジメント専攻卒業研究発表会」で発表します。この研究発表会は専攻に所属するすべての研究室がいくつかのグループごとに分かれて,基本的には同日に開催され,誰でも自由に発表を聴いたり,討論に参加することができます。2008年度,2009年度ともに,塘研究室は卒業研究の中間発表会と同様に,木村研,黒沢研,難波研と同じグループとして発表会を開催しています。

卒業研究発表会では要旨集が発行されます。発表する学生の卒業研究の概要が,それぞれA4版2ページで紹介されています。