Ryujyu HOSHI of 塘研究室

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Tsutsumi LABO. 塘研究室 since 2010-03-21

Ryujyu HOSHI

阿武隈川水系摺上川左支川(焼松川・布入川)の水生昆虫相 〜摺上川の水生昆虫相との比較〜

1.はじめに
 福島市北部を流れる摺上川の上流域には,2005年9月に摺上川ダムが建設された。ダム完成後の摺上川ダム堤体直下の流域では,支川である布入川の流入部の上下で記録される底生動物(水生昆虫)の種類数に差があり,それは支川である布入川に起因するものであるとの指摘がある(塘・山下,2007)。しかしながら,布入川にどのような底生動物(水生昆虫)が生息しているのかは明らかになっていない。
 そこで,本研究では布入川及びその上流域で布入川に流入する焼松川が,摺上川の底生動物にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的として,焼松川と布入川の水生昆虫相調査を行った。

2.調査地及び調査期間
 布入川および焼松川の水生昆虫相調査は,相互に環境の異なる4つの調査地(上流から順に,ポイント1,ポイント2,ポイント3,ポイント4)を設定し,2008年12月から2009年9月までに計6回(12月,1月,3月,5月,7月,9月)実施した。

3.結果及び考察
 本研究における調査の結果,焼松川と布入川からは,コドラート・サンプリングとランダム・サンプリングの両サンプリング方法によって合計9目58科106属136種の水生昆虫が採集された。焼松川と布入川の水生昆虫相については,4つの調査地の共通種が極めて多く,各調査地の固有種は少ないため,個体数を加味しなければ,調査地間よりも季節間の類似性の方が高いとの傾向が示された。ただし,河川環境の違いを反映して,源流域的環境であるポイント1と2(どちらも焼松川)との類似性が高いこと,上流域的環境であるポイント3と4(どちらも布入川)との類似性が高いことも示された。一方,定量的なデータに基づいて,個体数も加味した水生昆虫については,季節間よりも調査地間の類似性の方が高いとの傾向が示された。
 摺上川の調査地「茂庭中」からは記録されず,調査地「茂庭下」から記録された水生昆虫は44種類であり,その中の20種類(45.5%)が左支川である焼松川・布入川から記録された。摺上川の「茂庭中」の調査地と比べて「茂庭下」の調査地から採集される水生昆虫が多いのは,「茂庭下」の調査地には左支川である焼松川・布入川に由来する種類が多く含まれているためであると思われる。

塘 忠顕・星 竜樹(2010)阿武隈川水系摺上川左支川(焼松川・布入川)の水生昆虫相 〜摺上川の水生昆虫相との比較〜,福島大学共生システム理工学類,共生のシステム,10: 48-62.

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