Ryo YOSHIZAWA of 塘研究室

印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |


Tsutsumi LABO. 塘研究室 since 2010-03-21

Ryo YOSHIZAWA

土壌動物を用いた環境評価法の検討~ふくしま県民の森(大玉村)の事例から~

1.はじめに
 土壌動物を用いた環境評価方法の一例として,指標群として選ばれた32群の土壌動物の存否に基づいて土壌環境の健全性を評価する「土壌動物を用いた自然の豊かさ評価」がある。この方法は広く用いられているが,指標群の種類数や個体数を一切考慮しないため,今後この方法の利用をさらに広げていくためには自然の豊かさ評価の結果とその場所に生息する指標群の生物多様性との間にどのような関係があるのかを検討することが必要である。そこで本研究では,福島県安達郡大玉村にあるふくしま県民の森にて土壌動物を用いた自然の豊かさ評価を行い,その結果と指標群として選ばれているヤスデ類,カニムシ類,アリ類の種多様性を比較した。そして,指標群として選ばれた土壌動物の生物指標としての妥当性及び有用性を検討した。

2.調査地及び調査期間
 調査区画として杉田川上流に1地点(St. Aブナ帯)とフォレストパークあだたら内に2地点(St. B流水域,St. Cストリームパーク)の計3地点を設け,2007年10月から2008年11月まで,土壌動物の採集調査及びそれぞれの調査区画内の環境特性調査を行った。

3.結果及び考察
 自然の豊かさ(自然度,100点が上限)の年平均値は,St. Aブナ帯(64.07),St. B流水域(57.53),St. Cストリームパーク(54.07)の順で高かった。各調査区画の自然度は,出現する指標群数,植生自然度やリター層の厚さとの相関が認められたが,木本植物の多様性や階層構造の複雑さとの間には相関が認められなかった。土壌動物相の豊かさには有機物堆積層の発達の程度に加えて人為圧の規模や頻度が影響を及ぼすものと考えられる。
 ヤスデ類は自然度の高いSt. Aブナ帯(17種)とSt. B流水域(17種)で種類数が多く,自然度の低いSt. Cストリームパーク(13種)で最も少なかった。ヤスデ類の分布はリター層の厚さや土壌含水量の影響を受けるが,必ずしも自然度とヤスデ類の多様性との間に相関が見られるわけではなかった。そのため,ヤスデ類の指標群としての位置づけをA群からB群へと変更することも検討が必要と考えられる。また,人為圧が大きい場所ではそれに対する耐性種が多く出現するため,生物指標として用いる場合にはヤスデ類の存否のみではなく,種組成や生息密度も考慮すべきであろう。
 カニムシ類は自然度の高いSt. Aブナ帯で種類数が最も多く(5種),St. B流水域(2種)およびSt. Cストリームパーク(3種)では少なかった。カニムシ類の種類数及び種の多様度は,リター層の厚さ,土壌含水量や自然度などと相関が認められ,特に人為圧の高い場所で種の多様度が大きく低下した。この傾向はヤスデ類よりも明瞭であり,本種の指標群としての位置づけはB群よりもA群とした方が妥当であると考えられる。ただし,本研究で得られたカニムシ類の中には人為圧の大きい場所にも生息可能な種も含まれるため,生物指標として用いる場合にはそれらの存否のみではなく,種組成や生息密度も考慮すべきであろう。
 アリ類は自然度の高いSt. Aブナ帯(11種)で種類数が最も少なく,St. B流水域(13種)とSt. Cストリームパーク(13種)では多くの種が記録された。アリ類の種類数は植生や環境の多様性と相関が認められたが,自然度が高い場所ほどアリ類の種の多様度が高くなる傾向も認められた。このように,アリ類は自然度の高い場所で生息密度や種組成が安定するが,人為圧が大きい環境にも様々な種が分布可能なため,C群という位置づけは妥当である。ただし,分布の特性を特定できなかった種や,土壌から得られる土壌性以外の生活型を示すアリ類を生物指標としてどのように扱っていくのかを今後は検討する必要があろう。

吉澤 領・塘 忠顕(2009)ふくしま県民の森のアリ相(予報),福島生物,(52): 37-42.

塘研究室HPへLinkIcon