Maki ENDO of 塘研究室

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Tsutsumi LABO. 塘研究室 since 2010-03-21

Maki ENDO

ふくしま県民の森及びその周辺地域におけるチョウ相

1.はじめに
 ふくしま県民の森(以下「県民の森」と呼ぶ)及びその周辺地域では,これまでに多くの生物相調査が行われてきた。山口(2008)は2006~2007年にチョウ相の調査を実施し,福島県県民の森(1993)が記録したチョウ類のうち44種を再確認するとともに,それまでに記録のなかった新たな種を13種記録したが,15種を再確認することができなかった。そこで本研究では,福島県県民の森(1993)が記録したチョウ類の中で,山口(2008)が再確認できなかった種の確認を目的として,調査範囲,調査時間帯,調査頻度を拡大させて,県民の森及びその周辺地域においてチョウ相の調査を行った。

2.方法
 チョウ相の調査は2008年4月〜10月の期間に実施した。それぞれ含まれる環境が異なる調査ルートを県民の森及びその周辺地域に4本(森林ルート,草原ルート,杉田川沿い道路ルート,杉田川沿い林道ルート)設定し,1日でこれら4本のルートをすべて調査するルートセンサス調査と,調査ルートも含めた県民の森及びその周辺地域におけるランダム調査の両方法によって調査を行った。

3.結果及び考察
 県民の森及びその周辺地域における調査によって,5科68種のチョウ類が確認された。この中には同地からは新たな記録となる種が7種,福島県県民の森(1993)の記録以降未確認であった種が10種含まれている。これらの多くは,本研究が山口(2008)における調査よりも調査範囲,調査頻度を拡大したために記録されたものと思われる。一方で,山口(2008)が記録した種の中の6種,福島県県民の森(1993)が記録した種の中の5種は再確認できなかった。これらの多くは,それらの種の生息密度の低さが原因で確認できなかったものと思われる。なお,本研究における調査で確認されたチョウ類の中には,環境省と福島県の両方のレッド・データブックに記載されている3種が含まれていた。
 記録されたチョウ類を用いて,県民の森及びその周辺地域の環境評価を行った。環境指数(EI)による評価では,過去の記録による評価よりも高い評価となった。これは,県民の森及びその周辺地域には,チョウ類にとって良好な自然環境が15年間にわたり維持されていることを示唆するものである。各ルートの環境評価については,森林ルート,草原ルート,杉田川沿い道路ルートでは種の多様度が高く,良好な林や草原が存在する原始段階にある環境との結果が得られた。一方,杉田川沿い林道ルートは他の3本の調査ルートと比べると低い評価結果となった。これは,杉田川沿い林道ルートは他のルートよりも全長が短く,ルート中にチョウ類の吸蜜・吸汁源となる植物が少ないため,確認されるチョウ類の種類数及び個体数が少ないことが原因であると考えられる。

塘 忠顕・山口咲恵・遠藤真希(2008)ふくしま県民の森及びその周辺地域における蝶類の記録(2006年9月ー2008年5月),福島生物,(51): 31-39.

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