御清水−田付川間の地下水面分布

御清水公園観測孔および田付川幸橋付近の地下水観測孔による連続地下水位観測結果にもとづき,この地域での地下水面分布を検討してみましょう。

なお,御清水公園観測孔は柴崎研究室が設置したもので,田付川幸橋付近の地下水観測データは,福島県喜多方建設事務所に提供していただきました。

上の図のピンクの線に沿って,地下水面断面図を作成しました。

少し複雑な断面図ですが,注意深くみてみましょう。

断面図上部の太い横線は,地形面をあらわしています。これは,10mメッシュの数値標高データと都市計画図などを参考にして描きました。

3つの観測孔で測定した2006年12月1日からの水位変動記録は,それぞれグラフで示しています。グラフの位置は,観測孔の地盤標高をもとに配置しました。これにより,3つの観測孔で測定された地下水位を,標高で比較することができます。

御清水公園観測孔では,2007年2月9日以降のデータしかありませんが,3箇所の地下水位の標高を比較してみると,田付川右岸のH18B-1孔の地下水位が最も低く,御清水公園の地下水位はそれよりもわずかに高いことがわかります。一方,田付川左岸のH18B-2孔の地下水位は,右岸側よりも1mくらい高くなっています。

H18B-1孔H18B-2孔の間には田付川が流れていますが,ちょうど断面線の位置に一の関頭首工があり,河床断面に段差ができています。

河川水位や地下水位は時々刻々と変化しますが,2007年3月1日の地下水面分布を藍色の線で描いてみました。すると,H18B-1孔付近で地下水面が最も低く,田付川の河床よりも低くなっています。御清水公園の地下水面は,田付川河床標高とほぼ同じです。左岸側では,一の関頭首工の影響もあり,地下水面が右岸側よりも高くなっており,しかも地下水面は河床よりも高くなっています。

田付川の河川水位のデータはありませんが,2007年3月1日に河川水位がほぼ河床付近にあると仮定すると,田付川左岸では地下水が田付川に流出することになり,右岸側では田付川の水が地下水に流入することになります。


それでは,かつて御清水から地下水が湧出していた頃の地下水面はどのように分布していたのでしょうか?

清水(=湧水)は地下水の露頭とも言われるように,地下水面が地表面よりも高いときに湧出します。御清水は地形面がわずかに窪んだ谷部に位置しているので,御清水公園観測孔の場所では地表面から0.5mくらい下に地下水面があったと推定されます。昔の田付川の河川水位は今と変わらないと仮定すると,当時の地下水面は水色の破線のように分布していたと推定されます。


御清水を復活させるためには,どうすればよいのでしょうか?

現在の地下水面よりも,約3m地下水面を上昇させる必要があります。それでは,どのようにしたら,地下水面を3mも盛り上げることができるのでしょうか?

この断面線が通っている田付川幸橋付近の河川水位を3mも上昇させることは難しいでしょう。それよりも,御清水から北側の地域や田付川上流部で地下水への涵養を増やしてやる必要があります。それとともに,地下水の過剰揚水をコントロールして,地下水揚水による地下水面の低下を防ぐ必要もあります。

具体的に,どの場所で何をやれば一番効果的に地下水面を上昇させることができるのか,今後引き続き検討していきたいと思います。