福島大学放射線計測チーム

 

 福島大学は、キャンパス内の放射線量を低減させるため、キャンパス内のU字側溝、および図1に示す高線量地点(ホットスポット)に溜まった落ち葉や土砂等の除去と洗浄作業を行いました。その様子と除去による放射線量の変化は、大学のホームページ

http://www.fukushima-u.ac.jp/guidance/top/torikumi-josen.html

に公開されています。


図1 福島大学キャンパス内の除染地点


 多くの地点では、放射線量が大きく減少しましたが、表1に示すような地点では、あまり顕著な減少は見られませんでした。これらの地点では、汚染泥土を完全に取り除けなかった、側溝の底面などに放射性物質(主にセシウム)が吸着して、高圧水洗浄でも除去できなかった、などの理由が考えられます。


表1 除染によって、放射線量があまり下がらなかった地点



 ここでは、除染後も比較的放射線量の高かったいくつかの地点について、もう少し詳しく放射線量を見てみたいと思います。

 放射線は、その発生源から距離が離れるに従って減少します。 例えば、図2は、測定点3の付近の放射線量ですが、ここでは、雨水溝に流れ込む穴から高線量(この時は5.60μSv/h)の放射線が出ています。この地点から1m、2mと離れるにしたがって、(地上10cmでの)放射線量は、1.05μSv/h、0.92μSv/hと減少します。 地上1mでの値は、0.65μSv/hとなります。この緑の通路では、花壇側から2m(高さ1m)の地点全体に渡って0.65μSv/hに近い値が観測されました。つまり、放射線の発生点から2m離れた地点では、この程度(5.60μSv/h)の放射線の影響はほとんどない、と言えます。



図2 測定点3付近の放射線量 


 図3は、測定点2(理工実験棟周りの側溝)付近の(除染前の)放射線量を示しています。①~④は、側溝の蓋の真上(10cm)の値を示します。A~Gは、側溝から約2m離れた地点(地上1m)の値を示します。側溝の有無、側溝内から発する放射線の影響は、ここにもほとんど現れないことがわかります。

このように、ホットスポットが点として存在する場合は、現在残っている線量のレベルでは、約2mほど離れたところを歩けば、ほとんどその影響はないと言えます。



図3 測定点2(理工実験棟周りの側溝)の周辺の放射線量


 これらの地点も含め、学生が頻繁に行き来する通路の線量ついて、図4にまとめました。(ホットスポットや側溝から約2m離れた、高さ1mの地点での線量を示します。(除染後の値を示していますが、除染前もほとんど同じ値を示していました。)



図4 キャンパス内通路の放射線量 (除染後)


 例えば、測定点2の理工実験棟周りの側溝付近は、図4(D)に示すように、1.0μSv/h以下(0.35~0.70μSv/h)でした。

 また、測定点3に沿った緑の通路(C)も、0.63~0.73μSv/hでした。

測定点4に沿った体育館北側通路(B)は、除染前は、1.20~1.45μSv/hとやや高い値でしたが、除染後は0.85~1.08μSv/hとなりました。

測定点12(事務局棟と中央広場の間の通路)には、除染後もかなり高い放射線が残っていますが、そこから2m離れた地点は、1.13μSv/hと、その周辺の線量とほとんど差がありませんでした。

一方、S棟前広場から大学会館前のベンチのある区域は、他の通路などに比べ、やや高い値を示します(1.35~1.42μSv/h)。 ここは、アスファルトの間に格子状に土が溜まりやすいという地面の質が影響しているようです。


 このマップを金谷川駅から講義棟までの通学路マップとみなすと、南側(図の右側)から、

(A)グラウンドと保健体育棟・プールなどの間の通路

(B)保健体育棟前―体育館前の通路

(C)理工実験棟南側の緑の通路

(D)理工棟と理工実験棟の間の細い通路―M棟西側の階段を上がっていく経路

(E)人間発達、理工ロータリー前を通って階段を上がっていく経路

などがあると思いますが、このうち、

(D)の経路が比較的低い値を示し、(A)、(C)がそれに続き、(B)(E)は、やや高めです。

(B)(E)は、いずれも通路の片側に植え込みや花壇があり、そこからの放射線が影響していると思われます。

ただし、これらの値は、ホットスポットとなる(側溝等のある)側から2m離れた地点に沿っての測定値ですので、(A)、(B)、(C)など、幅の広い通路の場合、ホットスポット側からもっと離れれば、線量はもっと低くなるといえます。

 わずかの差ですが、毎日通る通学路、という点を考慮すると、できるだけ放射線量の低い通路を通るに越したことはないでしょう。

 

福島大学キャンパス内の放射線について(H23.10.3 掲載)

H23.5.10 更新

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